sangetsu

forBusiness

sangetsu

forBusiness
  • 0
  • カット
    サンプル

Designer's TALK
- 空間と素材
空間のつくり手が語る、空間と素材へのアプローチ

TALK #07

素材の風合いを常に意識して
GENETO 
山中 コ~ジ 山中 悠嗣

TALK #07 素材の風合いを常に意識して

二人は兄弟で、左が弟の悠嗣さん、右が兄のコ~ジさん。2018年2月16日までインスタレーション「THE WALL」を展示中の「DIESEL SHIBUYA」にて(特記以外の写真:栗原 論)

GENETO(ジェネット)は京都と東京を拠点に活動する設計・デザインチームだ。
その活動範囲は建築、プロダクト、アートなど、ジャンルにとらわれない。
また、アイデアを実現するために自ら手を動かすことも大切にしている。
その過程でのさまざまな素材との試行錯誤を、中心メンバーの山中コ~ジさんと山中悠嗣さんに聞いた。
まずはインスタレーション「THE WALL」のお話から。

GENETOによるインスタレーション「THE WALL」。壁什器に用いた鋼板は3種類あり、写真は黒皮鋼板のオイル仕上げ。開口部から向こうのシーンが垣間見え、来場者を奥へと誘う

GENETOによるインスタレーション「THE WALL」。壁什器に用いた鋼板は3種類あり、写真は黒皮鋼板のオイル仕上げ。開口部から向こうのシーンが垣間見え、来場者を奥へと誘う。 概要や会場詳細は https://www.diesel.co.jp/art/geneto_the_wall/

― 東京・渋谷の「DIESEL SHIBUYA(ディーゼル渋谷)」はイタリアのファッションブランド「ディーゼル」のコンセプトストアで、洋服だけではなく、家具や食器などのホームコレクションも揃えています。ホームコレクションの展示空間の演出には毎年、建築家や空間デザイナーを起用し、インスタレーションプロジェクトとして披露。2017年はGENETOの「THE WALL」で、その名の通り“壁”の可能性に着目した作品です。

コ~ジ:平面が変形四角形の場所に3枚の壁を立て、壁で囲まれる空間ごとに異なる生活シーンを見せています。また、壁の配置は3カ月に一度変え、来場者が会期中に異なる空間を体験できるようにしています。

壁は空間を仕切る以外に什器の役割も担うため、下地を木で組んで奥行きをもたせ、その表面に黒皮、溶融亜鉛めっき、錆び加工、計3種類の鋼板を貼りました。もとは鉄という同じ素材なのに、風合いがまるで違うでしょう?

山中 コ~ジ Koji Yamanaka

山中 コ~ジ Koji Yamanaka
1979年京都生まれ。1999年芸術忍者隊設立。2000年京都精華大学デザイン学科卒業。2004年芸術忍者隊をGENETOに改名。2014年~大阪成蹊大学芸術学部准教授。

「THE WALL」で使用した3種類の鋼板。黒皮
「THE WALL」で使用した3種類の鋼板。溶融亜鉛めっき
「THE WALL」で使用した3種類の鋼板。錆び加工

「THE WALL」で使用した3種類の鋼板。左から黒皮、溶融亜鉛めっき、錆び加工

山中 悠嗣 Yuji Yamanaka

山中 悠嗣 Yuji Yamanaka
1980年京都生まれ。1999年芸術忍者隊設立。2002年京都府立大学環境デザイン学科卒業。2004年芸術忍者隊をGENETOに改名。2006年東京工業大学大学院修了。2008年~東京理科大学非常勤講師。東京事務所を拠点に活動

悠嗣:鉄の風合いを強調したいと考え、この3種類を使いました。黒皮は鋼板の熱間圧延という加工過程で生じるもの。赤錆も鋼板を単純に酸化させたら自然に生じるもの。もう1種類は金属らしい銀色の表面にしたくて溶融亜鉛めっき鋼板を選びました。

鋼板の種類は壁の両面で変えています。壁や家具の配置パターンを検討して、壁は片面ずつ違うほうが空間の変化は大きいとの結論に至ったからです。

― 鋼鉄、すなわちスチールを選んだのはブランドのイメージに合わせてですか?

悠嗣:そうですね。「ディーゼル」のホームコレクションは“ロックなライフスタイル”を提案するというコンセプトですし、店舗空間にすでに黒皮鉄が使われていたので、ある程度合わせようと思いました。また、スチールへの興味も大きな理由です。

コ~ジ:僕たちはpivoto(ピボット)という木工制作部門を持っていて、これまではずっと合板によるものづくりを得意としてきました。でも、2016年12月に完成した「焼肉矢澤」で鋼板を使うことを経験し、スチールは合板に似た感覚で扱える、また、独特の風合いの良さがある、ということがわかったんです。

黒皮鋼板のオレンジオイル仕上げを初めて試みた京都の「焼肉矢澤」(写真:近藤泰岳)

黒皮鋼板のオレンジオイル仕上げを初めて試みた京都の「焼肉矢澤」(写真:近藤泰岳)

悠嗣:黒皮材は錆止めにクリア塗装をかけるのが一般的ですが、「焼肉矢澤」では限りなく黒皮材の“生”の状態を見せたいと思いました。その方法をいろいろ探っているときに、オレンジオイルがいいよと工務店が教えてくれたんです。オレンジオイルは通常、木製品のメンテナンスに使うそうですが、黒皮材に対しても表面保護の効果があります。また、オイルなので濡れ色のように艶やかになります。その具合が良かったので、「THE WALL」の黒皮鋼板も同じ方法で仕上げました。

― 「THE WALL」の鋼板は縦横の目が互い違いになるように貼っていますか?

悠嗣:スチールは方向性のない素材ですが、黒皮材は色ムラによるさまざまな表情があるので、それが浮かび上がるように大小の正方形をパッチワーク状に貼りました。この色ムラによって素材の特性が見えてくると思います。

さまざまな表情が浮かび上がる「THE WALL」の黒皮鋼板

さまざまな表情が浮かび上がる「THE WALL」の黒皮鋼板

  • 1
  • 2
Designer's TALK一覧へ