Designer's TALK
- 空間と素材
空間のつくり手が語る、空間と素材へのアプローチ
プロジェクトの完成度を高める素材の力
永山祐子建築設計 永山 祐子
素材のサンプルや永山さんの好きなアート作品が並ぶ事務所の打合せ室にて(特記以外の写真:深沢 次郎)
どのプロジェクトでも、素材の特性をとことん知ろうとする建築家の永山祐子さん。
後編では、永山さんの好きな素材の一つであるステンレスメッシュを例に、各プロジェクトでの使い方の違いなどを教えてもらった。
― 永山さんが設計した空間で印象的な素材の一つに、ステンレスメッシュがあります。西武渋谷店のA館5階ではかなり大々的に使っていますね。
永山:ステンレスメッシュはすごく好きな素材です。硬質なのに柔らかい雰囲気がある、遮るのに透ける。矛盾する方向性を併せ持つところが面白いと思っています。
矛盾というのは、プロジェクトを進めていく中でもいろいろと出てくるものです。「西武渋谷店A・B館5階」のプロジェクトでは共通環境のリニューアルデザインを担当したのですが、共通環境なので見通しが利くようにしなければならず、とはいえ、ある程度囲われた雰囲気の個室のような感じも出したい。そこで、ステンレスメッシュを用いました。
― 両者を見事に実現しています。
永山:普通に壁を立てると物理的に遮断されるだけで、その矛盾は解かれないままです。でも、素材の特性や素材が引き起こす現象をうまく利用すれば、矛盾を超えることができます。西武渋谷店ではそれが成功したと思います。
永山 祐子 Yuko Nagayama
1975年東京都生まれ。1998年昭和女子大学生活科学部生活美学科卒業後、青木淳建築計画事務所に入所。2002年に独立し、永山祐子建築設計を設立。
「西武渋谷店A・B館5階」のリニューアルプロジェクトでは、A館の空間構成においてステンレスメッシュが重要な役割を担った。ステンレスリングメッシュが美しいドレープを見せるように、吊り元に治具を設置している(写真:表 恒匡)
― ステンレスメッシュを初めて使ったのはどのプロジェクトですか?
永山:「ANTEPRIMA(アンテプリマ)六本木店」です。同ブランドのワイヤーバッグのためのお店だったので、バッグの素材感とイメージが結びついて採用しました。このときのステンレスメッシュのメーカーとはその後、何度もプロジェクトをご一緒しています。静岡が拠点で、本来はお茶の工場のベルトコンベアにも使われる素材なんですよ。
ステンレスメッシュを使うときは、空間の雰囲気に合わせて編み方などのデザインを変えています。アンテプリマでは可愛い感じになるように、メッシュに丸い立体感を出しました。京都の「IZAMA(イザマ)」は和食のお店なので、少し簾のような雰囲気の和に寄せて、落ち着いたデザインにしています。
ステンレスメッシュを初めて使った「ANTEPRIMA六本木店」。同ブランドを代表するワイヤーバッグの素材感がイメージ源になった(写真:阿野 太一)
和食店「IZAMA」ではテーブル間の仕切りにステンレスメッシュを採用。そのデザインは簾から発想した(写真:表 恒匡)
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