sangetsu

forBusiness

sangetsu

forBusiness
  • 0
  • カット
    サンプル

Designer's TALK
- 空間と素材
空間のつくり手が語る、空間と素材へのアプローチ

TALK #09

インテリアを豊かにする素材の使い方
黒田美津子事務所 / Laboratoryy 黒田 美津子

TALK #09 インテリアを豊かにする素材の使い方

サンゲツ品川ショールームのスタイルショーケースの1つ、「BOTANICAL LIVING(ボタニカル・リビング)」にて(*印以外の写真:栗原 論)

サンゲツ品川ショールームの中央に展開している4つのスタイル展示が2017年6月末に一新。
インテリアスタイリストの黒田美津子さんがテーマ設定から内装ディレクション、スタイリングまで手がけた。
限られたスペースに各スタイルの魅力を凝縮した展示は、見る側のイメージを膨らませる。
それぞれのスタイリングのポイントを、2回に分けてご紹介しよう。

サンゲツ品川ショールームの中央には4つの「スタイルショーケース」があり、1つのショーケースに3つのつながりのある生活空間を再現(*)

サンゲツ品川ショールームの中央には4つの「スタイルショーケース」があり、1つのショーケースに3つのつながりのある生活空間を再現(*)

― 品川ショールームの「スタイルショーケース」は、住空間を再現するなかでさまざまなデザインスタイルを見せています。黒田さんのスタイリングにより一新した4つのショーケースについて、ポイントをお聞かせください。

黒田:ディスプレイを一新するだけではなく、新しいライフスタイルの提案を含んだ、インテリアコーディネートのヒントを提供する展示スペースになると良いと考えました。ショーケースには1つずつテーマがあります。サンゲツの皆さんと相談しながら、「BOTANICAL LIVING(ボタニカル・リビング)」「WOODY JAPANESE(ウッディ・ジャパニーズ)」「PRE MODERN(プレ・モダン)」「CHIC NORDIC(シック・ノルディック)」の4つのテーマを設定しました。

そしてテーマごとに3つの部屋をつくり、日常の生活シーンを表現しています。そのなかにはボタニカル・リビングの「サンルーム」や、ウッディ・ジャパニーズの「ワークルーム」「ティールーム」、シック・ノルディックの「ドレスルーム」など、提案型の部屋もあります。今はライフスタイルが多様になり、既成概念にとらわれない部屋をつくる方が増えていますからね。

黒田 美津子 Mitsuko Kuroda
1988年に女性誌『Hanako』(マガジンハウス)の創刊メンバーとして雑誌記者に。8年間の記者生活の後はフリーランスとして、女性誌やデザイン誌を中心に記事制作、執筆、スタイリングを担当。現在は広告、イベント、展示、商業施設、ホテル、住宅、レストランのインテリアディレクション、スタイリング、コンセプトワークまで幅広く手がける

【BOTANICAL LIVING / Sunroom(左)】

【BOTANICAL LIVING / Sunroom】

【BOTANICAL LIVING / Utility(右)】

【BOTANICAL LIVING / Utility】

― ボタニカル・リビングはどんな暮らしのイメージから生まれたのでしょうか?

黒田:植物やガーデニングが好きな人の住まいをイメージしました。ハーブや緑を育てているイメージですね。サンルームは屋内と屋外の中間のような部屋を想定しています。こんな部屋が自分の家にあったらいいな、と思って。大きな木製の台は工場で使われていたアンティークで、このスペースに置いてサイズのバランスがとれるのか、搬入当日までドキドキしました(笑)。

― サンルーム正面の壁面に貼っている壁紙は、黒田さんがクリエイティブ・ディレクションを務めたコレクション「NATURE REFLECTIONS(ネイチャー・リフレクションズ)」のものですね。

黒田:「ネイチャー・リフレクションズ」は繊細な自然や自然現象をモチーフにした5つのデザインシリーズがあり、グラフィックデザインはラッピングブランドの「HOW TO WRAP_」さんにお願いしました。この壁紙「FADE」シリーズは、植物に備わる美しい秩序と法則を幾何学的なグラフィックに表現したもので、植物の気配を感じさせるモダンなデザインです。一方、右側の壁面にはモールドを使い、ややクラシックな雰囲気を演出しました。

― 隣のユーティリティーは、洗面台側に貼った壁紙が鮮やかで目を引きますね。

黒田:ユーティリティーはサンルームからひと続きの想定でつくり込んでいます。以前から設置されていた洗面台は面材を貼り替え、コンクリートのような仕上げに。また、雰囲気をがらりと変えるために大胆な花柄の壁紙を片面にだけ貼りました。

日本の壁紙の需要は年間約7億㎡あるそうですが、採用されるのは大半が無地で、色も白やベージュ、グレーということです。たくさんの選択肢があるのにもったいない。

壁面は毎日、自ずと目に入ります。気に入った色柄の壁紙を貼っていれば、気分が良いですよね? 壁面は想像以上に気持ちに影響しますし、その気持ちは日々積み重なっていくので、ポジティブに選んでいただくと良いと思います。

― 壁面は面積が大きいから、つい無難なものを選んでしまうという人が多いとは思いますが。

黒田:全面ではなく一面だけ柄物の壁紙を取り入れるとか、トイレや洗面所などの小さなスペースは少し華やかな柄を選ぶとか、方法はいろいろあります。とはいえ生活者の方にはハードルが高いかもしれません。プロの方が背中を押してあげてほしいところですね。剥がしたときに痕が残らない糊もあり、飽きたら貼り替えるのも簡単です。

「NATURE REFLECTIONS」コレクションの壁紙「FADE」シリーズ。写真は「BOTANICAL LIVING」のサンルーム正面の壁面に貼ったものの色違い(*)

「NATURE REFLECTIONS」コレクションの壁紙「FADE」シリーズ。写真は「BOTANICAL LIVING」のサンルーム正面の壁面に貼ったものの色違い(*)

【BOTANICAL LIVING / Dining】

【BOTANICAL LIVING / Dining】

― ダイニングの壁紙も「ネイチャー・リフレクションズ」ですね。

黒田:「ATMOSPHERE」と名づけたこのシリーズは、月夜と朝霧を思わせる空気感を淡いグレーとブルーグレーの2色に落とし込んでいます。パターンは光が差し込む様子をグラフィックにしていて、ラインが入っているもの、そのラインが細かく入っているもの、無地の3種類があり、組み合わせればグラデーションになりますし、縦横の貼り方も自由です。パターンが目立ちすぎず、使いやすい壁紙だと思います。

「NATURE REFLECTIONS」コレクションの「ATMOSPHERE」シリーズは2色、パターンは無地を含めて各3種ある(*)
「NATURE REFLECTIONS」コレクションの「ATMOSPHERE」シリーズは2色、パターンは無地を含めて各3種ある(*)
「NATURE REFLECTIONS」コレクションの「ATMOSPHERE」シリーズは2色、パターンは無地を含めて各3種ある(*)

「NATURE REFLECTIONS」コレクションの「ATMOSPHERE」シリーズは2色、パターンは無地を含めて各3種ある(*)

― テーブルまわりの椅子は白一色ですが、すべて形が異なります。

黒田:デザインの違う椅子をいろいろ置く場合は、色を揃えるとうまくいきます。お化粧やお料理で最後に頬紅をひと塗りする、あるいはパセリを彩りに添えたり散らしたりするのと同じ感覚で、インテリアも1つの色を拠りどころにして、アクセントに別の色を加える、と考えていくと全体がまとまりやすい。ここでは白を基調に、右側の壁紙のブルーグレーや、窓のドレープのブラウン、曲げ木の椅子の張り地のブルーなどがアクセントカラーとして相乗効果をもたらします。流行のハンギングも効果的に見えると思います。

現代の暮らしに合わせたカジュアルな和のスタイル

― 次はウッディ・ジャパニーズです。現代の住まいに取り入れやすい和のスタイルとのことですが、いわゆる和モダンとは違いますね。

黒田:和の空間というと年齢層の高い方向きに設えることが多いけれど、ここでは少しカジュアルな感じにしました。ワークルームは編物や手芸などを楽しむ趣味の部屋のイメージで、小道具も細かく揃えていますからチェックしてみてくださいね。

【WOODY JAPANESE / Work Room】

【WOODY JAPANESE / Work Room】

― ワークルームの壁面はサンゲツの粘着剤付化粧フィルム「リアテック」の木目シリーズを、パネル工法で施工しています。市松模様の配置が新鮮です。

黒田:「リアテック」はすごく良い内装材だと思います。木目以外に石やコンクリート、金属調など色柄の種類が豊富なうえ、その柄の再現性も高い。高級な素材ですが、今回はここぞとばかりに、ふんだんに採用しました(笑)。

このレースのグラデーションもきれいですよね。和菓子みたい。窓の外に緑があると、より映えるだろうと思います。

【WOODY JAPANESE / Tea Room】

【WOODY JAPANESE / Tea Room】

【WOODY JAPANESE / Sanitary】

【WOODY JAPANESE / Sanitary】

― ティールームは特に、カジュアルな和の空間というコンセプトが明快に表れていますね。

黒田:リビングでもダイニングでもない、第二のリラックス空間として設えています。ベンチソファは壁付けできるように造作しました。ソファの背や肘の天板は簡単な床の間といったところ。伝統的な床の間は何かを飾るにもしきたりが気になりますが、こういう形なら気軽に花や小物を飾って楽しめるでしょう?

正面の壁面には「ネイチャー・リフレクションズ」の「SPRING SNOW」シリーズの壁紙を貼りました。雪の結晶や雪の粒がデザインのモチーフで、ごく淡いグレーにのせたエンボス加工により柄が浮き出ています。

「WOODY JAPANESE」のティールーム正面の壁面に貼った「SPRING SNOW」シリーズの壁紙。FE-1051は雪の結晶×粉雪グレーのイメージ(*)

「WOODY JAPANESE」のティールーム正面の壁面に貼った「SPRING SNOW」シリーズの壁紙。雪の結晶×粉雪グレーのイメージ(*)

黒田さんディレクションの壁紙コレクション「NATURE REFLECTIONS」は見本帳「FINE 2017-2019」に収録

黒田さんディレクションの壁紙コレクション「NATURE REFLECTIONS」は見本帳「FINE 2017-2019」に収録

― サニタリーは、竹林のような柄に見える壁紙が北欧ブランド「フィンレイソン」の商品と聞いて驚きました。

黒田:和のスタイルに用いても違和感ありませんよね。サニタリーに障子を付けたり、ペンダントランプを吊るしたりするのも素敵ではないでしょうか。

― 木目の壁紙を天井にも連続させているのが良いですね。

黒田:木の雰囲気がぐっと濃厚になりますよね。天井はそれこそ、柄物の壁紙を貼ることが少ないと思いますが、このスタイルショーケースではいくつか試みています。実際に貼ったときの雰囲気をぜひご自分の目で確かめ、仕事のヒントにしていただければと思っています。

(TALK #10に続く)

Designer's TALK一覧へ