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Designer's TALK
- 空間と素材
空間のつくり手が語る、空間と素材へのアプローチ

TALK #06

デザインはコミュニケーションの方法
設計事務所ima 小林 恭 小林 マナ

TALK #06 デザインはコミュニケーションの方法

事務所兼自宅の2階リビングルーム。壁一面の飾り棚も二人のセンスで満ちている(写真:栗原 論)

設計事務所ima(イマ)の小林恭さんと小林マナさんは、デザインはコミュニケーションの方法の一つと語る。
空間から自ずと店のコンセプトやブランドの個性などが伝わる。
また、空間とその利用者との間に親密な関係が生まれる。
二人はいつもそのような空間を目指し、クライアントからの「お題」を起点にデザインを練り上げ、素材を選ぶ。
後編ではそのデザインの意図をさらに掘り下げていこう。

「DESPERADO」の店内は、ロビーをイメージしたモルタル床のスペースと、コンセプチュアルな三つの客室という構成。什器はすべて可動式。奥の小部屋に什器を格納し、中央に大きなスペースを確保することもできる(写真:Nacasa & Partners)

「DESPERADO」の店内は、ロビーをイメージしたモルタル床のスペースと、コンセプチュアルな三つの客室という構成。什器はすべて可動式。奥の小部屋に什器を格納し、中央に大きなスペースを確保することもできる(写真:Nacasa & Partners)

― お二人がデザインする空間は、東京・渋谷の「DESPERADO(デスペラード)」をはじめ、つくり込みが徹底しています。

恭:「デスペラード」は国内外の若手デザイナーの服や雑貨を扱うセレクトショップで、2000年の開業時は、カジュアルで入りやすい店にしたいというクライアントの要望をもとに、3ツ星ホテルのイメージで内装をデザインしました。

その後、2013年にコミュニティストアとしてリニューアルオープンすることになり、以前のアメリカ西海岸のモーテルのイメージは変わらないまま、集まる人々をあたたかく迎えるような素材を用いて、気取らない居心地の良い空間をつくりました。また、今回はモノを売るだけではなくコトに対応できる店にするとのことだったので、什器にすべてキャスターを付けてレイアウトを簡単に変えられるようにし、イベントなどを開催しやすいようにもしています。

― ゼブラ柄の絨毯を床から続けて壁にまで貼っているのが印象的です。

恭:絨毯を壁にも貼ってほしいというのはクライアントの要望でした。絨毯なら展示替えのときのビス穴が目立たないからです。壁に貼る場合は床からつなげると空間が広がります。クライアントから、商品と空間がぶつかり合うエネルギッシュな店にしたいと言われていたので、おもしろい素材感で構成しようと思いました。

小林 恭 Takashi Kobayashi

小林 恭 Takashi Kobayashi
1966年兵庫県生まれ。1990年多摩美術大学インテリアデザイン科卒業後、カザッポ&アソシエイツに入社。1998年に設計事務所imaを共同設立

ゼブラ柄の絨毯スペースの奥はこのトラッド調のスペースで、雰囲気が一変(特記以外の写真:Nacasa & Partners)

ゼブラ柄の絨毯スペースの奥はこのトラッド調のスペースで、雰囲気が一変(写真:Nacasa & Partners)

小林 マナ Mana Kobayashi

小林 マナ Mana Kobayashi
1966年東京都生まれ。1998年武蔵野美術大学工芸デザイン科卒業後、ディスプレイデザイン会社に入社。1998年に設計事務所imaを共同設立

― ゼブラ柄の絨毯スペースの隣はトラッドなイメージのスペースだったり、什器はすべてデザインが違ったり、空間だけでもかなりエネルギッシュだと思います。

マナ:什器はデザインしまくりました(笑)。このような空間でも、若手デザイナーが手がけた商品も個性が強く、負けていません。

― クリエイティビティのぶつかり合いというわけですね。でも、まとまりもある。

恭:そうですね。うるさい感じはないと思います。

マナ:男性客が多いのですが、何の店だろうと思うのでしょうね。皆さん店内をぐるぐる回っています。什器の置き方によって空間の印象が変わりますし、形が変わる什器もあります。

クライアントとは長いお付き合いで、この人ならこの空間を使いこなせるという確信がありました。クライアント自身がイベントの企画や店内のレイアウト替えを行うことがわかっていましたから。

恭:いつ行っても店のインテリアが違う。最近はエスカレートして、店のスタッフと一緒に什器をDIYしていてビックリしました(笑)。

「ファミリア代官山店」では床材の違いによって体験スペースと商品販売スペースを分けている(写真:Nacasa & Partners)

「ファミリア代官山店」では床材の違いによって体験スペースと商品販売スペースを分けている(写真:Nacasa & Partners)

― 2016年6月にオープンした「ファミリア代官山店」も新しいコンセプトの店ですよね。

恭:「for the first 1000 days」をコンセプトに、妊娠から1000日という赤ちゃんにとって大切な期間に特化し、妊婦さんや産後のお母さん、2歳までの赤ちゃんがいろいろ体験できる店です。

マナ:赤ちゃんが最初に触れるものは厳選してほしい、というクライアントの考えがベースにあり、単なる販売店ではなく、お母さん方への啓蒙の意味合いを含みます。

恭:店内には、ワークショップができるスペース、赤ちゃんに離乳食を食べさせられるカウンター、出産準備ではどういう品物が必要かを可視化した什器などがあります。クライアントのコンセプトや要望をもとにコンテンツを空間に落とし込み、フローリングをヘリンボーンに張った円の内側は体験スペース、外側のグレーの床は商品販売スペースという区分けにしました。

マナ:グレーの床には私たちの事務所の床と同じオーク材を使いました。グレーの色合いも同じです。

客船の内装をテーマにデザインした長崎店(写真:ルック)

オーク材をグレーに塗装したimaの事務所の床。この具合が良かったので「ファミリア代官山店」にも同様の床仕上げを採用した

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