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Designer's TALK
- 空間と素材
空間のつくり手が語る、空間と素材へのアプローチ

TALK #05

空間の密度を保つ素材の選び方
設計事務所ima 小林 恭 小林 マナ

TALK #05 空間の密度を保つ素材の選び方

1階の打ち合わせスペースは白とグレーを基調とするニュートラルな空間。差し色のクリームイエローが効いている(特記以外の写真:栗原 論)

店舗のインテリアデザインを中心に活動する設計事務所ima(イマ)の小林恭さんと小林マナさん。
コンセプトワークから設計の細部に至るまでの丁寧な仕事ぶりと、絶妙なバランス感覚に定評がある。
店舗デザインに用いる素材は、商品が魅力的に見えるというだけではなく、空間の密度を保つものを選ぶことが大切だと二人は語る。

― お二人が設計したこの事務所兼自宅は2016年の秋に完成したそうですね。井の頭公園に隣接する立地で、窓の向こうは一面の緑。広いテラスもある。実にうらやましい環境です。

恭:公園の緑を最大限に活かすようにプランを考え、1階の事務所も2階の自宅も、公園に面する北側は開口部を大きく取りました。北側の光は穏やかですから、あえてカーテンやブラインドを取り付けず、外の景色をそのまま取り込み、緑に近い生活を楽しんでいます。

― そもそもカーテンレールがないのですね。

マナ:そうなんです。サンゲツさんの前では言いにくいのですが(笑)。

小林 恭 Takashi Kobayashi

小林 恭 Takashi Kobayashi
1966年兵庫県生まれ。1990年多摩美術大学インテリアデザイン科卒業後、カザッポ&アソシエイツに入社。1998年に設計事務所imaを共同設立

打ち合わせスペースは自宅のダイニングルームを兼ね、事務所スペースとの間にあるキッチンは共用。テーブルの天板には、オークの無垢材を表面に貼り合わせたフローリングを使っている

打ち合わせスペースは自宅のダイニングルームを兼ね、事務所スペースとの間にあるキッチンは共用。テーブルの天板には、オークの無垢材を表面に貼り合わせたフローリングを使っている

小林 マナ Mana Kobayashi

小林 マナ Mana Kobayashi
1966年東京都生まれ。1998年武蔵野美術大学工芸デザイン科卒業後、ディスプレイデザイン会社に入社。1998年に設計事務所imaを共同設立

― ヨーロッパでは窓のカーテンを開けっ放しにして、通りから室内が丸見えの家も多いですよね。どうぞ見てください、と言わんばかりに。

マナ:それで室内をちらりと覗くと、きちんときれいにしてあるのがいいんですよね。日本の家の窓辺でよく目にするのは、カーテンが洗濯物や手前に置いた棚で押しつぶされている光景で、どうにかならないものかといつも残念に思います。

恭:オフィスでも、ブラインドの手前に書類を山積みにして、そのせいでブラインドの羽根がグチャグチャとなっていたり。外から見ると本当にみっともない。

マナ:あれはすごく嫌いです。せっかくの窓がまったく美しくなくて、景観も台無しで。

恭:フィンランドのヘルシンキではカーテンの柄を屋外に向けている家が多いようです。街中の建物はグレーなどの落ち着いた色調で、その小さな窓からポッと「マリメッコ」の色鮮やかなファブリックが見えると、とてもきれいです。窓が景観をつくることを人々も意識しているのでしょう。

マナ:ドイツやフランスなどで窓の外に花を飾るのも景観のためですよね。サンゲツさんも日本の景観の向上のために、カーテンの柄を屋外に向けることを提案したらいかがですか?

「IL BISONTE」の池袋店は、ブランドの世界観を体感できるという意味で、「このブランドの店舗デザインの雛型」と恭さんは話す(写真:ルック)

「IL BISONTE」の池袋店は、ブランドの世界観を体感できるという意味で、「このブランドの店舗デザインの雛型」と恭さんは話す(写真:ルック)

― 貴重なご意見をいただいたところで、そろそろ本題に移りまして、お二人は素材から空間のあり方を発想することはありますか?

恭:素材から発想を広げた空間といえば、イタリアのバッグ・革製品のブランド「IL BISONTE(イル ビゾンテ)」のショップが該当しますね。特に人気があるのはヌメ革の商品で、ヌメ革は使い込むほど経年変化し、味わいが増します。

1店舗目を設計するときはそのヌメ革に合う素材を探すことから始め、同じように経年変化を楽しめる素材が好ましいと思い、商品を置く棚や什器に古材や無垢材を多用しました。その後に設計した店舗でも、それは変えていません。

ただ、全国に40店舗近くあり、九州では鹿児島の人が福岡の店に行ったりもする。そこで一部、使う素材は変えないものの、デザインのテーマを設定した店があります。例えば長崎店は海のイメージから客船の内装がテーマで、2017年の春にリニューアルオープンした吉祥寺店は音楽がテーマです。

客船の内装をテーマにデザインした長崎店(写真:ルック)

客船の内装をテーマにデザインした長崎店(写真:ルック)

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