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Designer's TALK
- 空間と素材
空間のつくり手が語る、空間と素材へのアプローチ

TALK #01

一つの「敷地」で、主役となる素材を決める
トラフ建築設計事務所 鈴野 浩一 禿 真哉

TALK #01 一つの「敷地」で、主役となる素材を決める

2016年10月〜12月開催の「トラフ展 インサイド・アウト」の会場だった東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間にて(特記以外の写真:深沢 次郎)

プロダクトデザインから建築設計まで、ボーダーレスに活躍するトラフ建築設計事務所の鈴野浩一さんと禿真哉さん。
2004年からの活動で手がけたプロジェクトは200を超える。
いずれにも共通するのは、見る人をハッとさせる、独自の視点とアプローチだ。
その斬新なアイデアは、素材を見て触れて感じたことから生まれることも多いという。そのお話の前編。

― 空間を生み出す過程で、仕上げ材や装飾材はどのあたりから具体的に浮かんでくるのでしょうか?素材から空間のあり方を発想することはありますか?

トラフ:多いですね。素材から出発するアプローチは僕たちにとっては自然で、料理人が市場で新鮮な野菜や魚を見て、これをどう活かせるだろうと料理のイメージを膨らませたり、最小限の食材で美味しいものをつくろうとしたりするのに似ているように思います。コンセプトを決めて、設計を進めるなかで素材を探すという建築やインテリアの一般的なアプローチとは正反対ですが、僕たちはこれも一つの「インサイド・アウト(Inside Outは「裏返し」の意味)」と考えています。

例えばオーストラリアのスキンケアブランド「イソップ(Aesop)」の各店舗がそうです。2012年6月に同時オープンした新丸ビル店と横浜ベイクォーター店を皮切りに、現在までに9店を設計しました。イソップの店づくりには「ワンストア・ワンマテリアル」という条件があり、さらに置く商品はどの店も同じで、その置き方にも細かいルールが決められています。店舗ごとに異なるインテリアにするにはマテリアル、つまり素材選びがとても重要になります。

― 選ぶときの決め手になるものはありますか?

トラフ:周りの環境です。周りの環境とは、出店する地域そのものだったり、商業施設内の雰囲気や、隣接する店舗の様子だったり。これらを含めて、与えられた場所を「敷地」と捉えると、ごく自然に素材を決められるのです。

仙台パルコ2店は、仙台という寒冷地なので、木を使ってあたたかい雰囲気にしたいと思い、壁面に国産杉の角材をルーバー状に張り、板目の出る面を見せて木の存在感を強調しています。一方、シンクやシェルフはスチールでつくりました。浮いたように軽やかな感じで、空間内にコントラストが生まれ、木という主役を引き立たせています。

鈴野 浩一 Koichi Suzuno

鈴野 浩一 Koichi Suzuno
1973年神奈川県生まれ。1996年東京理科大学卒業。1998年横浜国立大学大学院修士課程修了後、シーラカンスK&Hに勤務。2002〜03年Kerstin Thompson Architects(豪メルボルン)に勤務。2004年トラフ建築設計事務所を共同設立

禿 真哉 Shinya Kamuro

禿 真哉 Shinya Kamuro
1974年島根県生まれ。1997年明治大学卒業。1999年同大学院修士課程修了後、青木淳建築計画事務所に勤務。2004年トラフ建築設計事務所を共同設立

Aesop 仙台パルコ2店

木を空間の主役とした「Aesop 仙台パルコ2店」(写真:太田 拓実)

鈴野 浩一 Koichi Suzuno

トラフ:コントラストという点では、東京ミッドタウン店は周りが竹などを用いたあたたかみのある環境で、それと同化しないように、また、お客さんがイソップの世界に没頭できるように、ステンレスを選びました。この素材を使うと決めた時点で「実験室」というコンセプトも浮かび、シンクには水を貯めるための球体ガラス容器を天井から吊るしています。イソップの店舗はどこもシンクの設置が求められるのですが、東京ミッドタウン店は床を上げないと配管できなかった。僕たちはここでは段差を設けたくなかったので、天井から水を下ろす形を考えたんです。

Aesop 東京ミッドタウン店

ステンレスを用いてクールな雰囲気の「Aesop 東京ミッドタウン店」(写真:太田 拓実)

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