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Designer's TALK
- 空間と素材
空間のつくり手が語る、空間と素材へのアプローチ

TALK #01

一つの「敷地」で、主役となる素材を決める
トラフ建築設計事務所 鈴野 浩一 禿 真哉

「敷地」の差異を引き出せば、自ずとユニークな空間に

― 杉、ステンレス、そしてニュウマン新宿店ではライムストーンを使っていますね。ニュウマン新宿店はまた、「敷地」が壁に囲われていません。四方がすべて共用通路に面している難しさもあったのではないでしょうか。

トラフ:新宿駅直結の商業施設内なので、人の往来がとにかく多いことが予想されました。しかも共用通路に囲まれている。そのように忙しない敷地に選んだのは、重厚感のある石です。変わらずずっと在り続けるような、どっしりとした素材がふさわしいと考えました。

「イソップ」各店舗で使われた素材も「トラフ展」に展示された

「イソップ」各店舗で使われた素材も「トラフ展」に展示された

Aesop ニュウマン新宿店

石の塊を削り出したような「イソップ ニュウマン新宿店」(写真:太田 拓実)

什器のディテール(写真:太田拓実)

什器のディテール(写真:太田 拓実)

禿 真哉 Shinya Kamuro

トラフ:実際に使ったのはライムストーンの薄い板状のものですが、大きな石の塊を削り出して什器をつくったように見せるために、100以上のピースを貼って立体的にしています。ライムストーンの効果はもう一つあり、その優しい色調とイソップの琥珀色のパッケージがコントラストを生み、店舗を視覚的に独立させています。

敷地は一つとして同じものがありません。ですからその差異を見つけて引き出せば、自ずとユニークな建築やインテリアが生まれるはずです。インターネットの発達によって、実店舗の存在意義がシビアに問われるようになりましたが、人が行きたくなる空間というのは確実にあると思っています。五感が刺激される体験は実際の空間でしか得られませんから。

― そうですね。ほしい物を手に入れるというだけではなく、ほしい物を手に入れる時間が豊かになるという点で、実店舗が担う役割は以前より大きくなっているように思います。

トラフ:東京・中野のジェラート専門店「スノーピクニック」は、その場でアイスクリームの原液に液体窒素を混ぜてジェラートをつくるという販売形態で、そのパフォーマンスを見て楽しめる店舗が求められました。奥に細長い空間で、入り口から奥に向かって3段階に床を高くし、一番奥にステージに見立てたキッチンカウンターを設けています。

スノーピクニック

古い木造の建物をリノベーションした飲食店舗「スノーピクニック」(写真:太田 拓実)

トラフ:床は段差ごとに3種類の仕上げ材を使い分け、入り口付近は外部を含めてヴィンテージタイル、次はリノリウム、最も高い床はヘリンボーン張りのフローリングです。そして段差をまたぐように設置した大テーブルや、壁から突き出たテーブルの天板にも同じタイルやフローリングを用いました。素材が追いかけっこしているイメージです。

壁は塗装ですが、床と同様に色を切り替えています。塗り分け方も斜めに光が差し込んでいるようにしました。大テーブルやソファ席、二人で向き合える席などがあり、お客さんは望むくつろぎ方や好みの素材などで場所を選べます。

(TALK #02に続く)

鈴野浩一 禿真哉
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