Designer's TALK
- 空間と素材
空間のつくり手が語る、空間と素材へのアプローチ
デザインはコミュニケーションの方法
設計事務所ima 小林 恭 小林 マナ
店のコンセプトやブランドの個性を空間で表現

「ファミリア代官山店」では入り口近くに店内の見取り図を掲示し、どんなスペースがあるか、来店者が迷わないようにしている(写真:Nacasa & Partners)
― 平面プランがクマの顔の形なのは、ブランドのキャラクターに合わせて、ということでしょうか?
恭:初めからクマの顔にしようと思ったわけではないんです。スクエアなプランからスタートしたものの、妊婦さんや赤ちゃん連れのお母さんがそこを回遊する様子がどうしてもイメージできなかった。そこで、アールの形状を加えたら、中央にもともとあった柱が鼻のようになり、必要な要素をきれいに配置していったら、だんだんとクマの顔に(笑)。最終的に耳の円は付けましたが、ファミリアさんでなければこのようなプランにはならなかったでしょうね。


モダンながら可愛らしさも感じさせるインテリア(写真:Nacasa & Partners)
― 素材や色調はどのように決めていったのでしょうか?
恭:木部は無垢のオーク材、ピンクと水色のカウンターは人造大理石というように、ファミリアさんの商品に合わせて上質な素材で構成しています。来店するのは妊婦さんやお母さんたちなので、子ども向けではなく大人向けの空間として質感のある素材を使い、モダンなデザインの中にピンクなどで可愛らしさを感じるようにと考えました。

天井の高い空間に、ファブリックの鮮やかな色柄が映える「マリメッコ」のニューヨーク店。中央のフローティングハンガーは同ブランドの古いアーカイブの写真からヒントを得たという(写真:Nacasa & Partners)

ベッドカバーを展示するための5段ベッド(写真:Nacasa & Partners)
― お二人は「マリメッコ」の海外の店舗も設計しています。海外の仕事で素材を選ぶときの難しさはありますか?
マナ:海外で素材を探すのはとても大変です。施工者との意思疎通の難しさもありますし、エイジングなど日本では普通に頼める仕上げができない。エイジングは「人間がつくるものではなく、自然になっているもの」という認識なんです。海外で初めて設計した「マリメッコ」のベルリン店で大変な思いをしたので、その後は世界中どこにでもある素材を自分たちで探して使うようになりました。
恭:店内の木部はオークやバーチ、什器はスチール、床はモルタルやコンクリートというように、ニュートラルな素材で構成することが多いですね。海外で仕事をして、日本の施工者がいかに上手くて早くて安いかがわかりました。
マナ:例えばニューヨーク店は、マディソン・スクエア・パークを真正面に望める立地です。公園を散歩していた人がそのまま入れるカジュアルな店にしようと、ニュートラルな素材を使ってクリーンで爽やかな空間をつくり、その中にオークの素材感を取り入れました。

ニュートラルな空間にオーク材の質感が効いている(写真:Nacasa & Partners)
― 空間の天井の高さを活かしたデザインです。
マナ:高い天井に見合うように、ボリュームのある什器を設置しました。入ってすぐ目を引く場所にファブリックの什器を配置して、 生地から始まった会社であることを象徴するように見せています。
― 「マリメッコ」は日本での店舗設計が評価されて本国での仕事に結びついたんですよね。
恭:デザインはコミュニケーションの方法の一つだと思っています。本国からのオファーは、僕たちのデザインの意図がきちんと伝わり、それが間違っていなかったということですから、やはりうれしいですね。

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