コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスに関する考え方

当社は、急速に変化する事業環境において長期的に企業価値の向上を図るため、多岐にわたるステークホルダーと良好な関係を築き、持続的に発展していくことを目指しています。その実現のため、経営の独立性・客観性・透明性を基盤とし、ガバナンス体制の整備やさまざまな施策の実行により、コーポレートガバナンスの強化を行っています。
2015年には、社外取締役の経営参加による取締役会の監査・監督機能を強化することをねらいとして、監査等委員会設置会社へ移行しました。

コーポレートガバナンス報告書

コーポレートガバナンス体制

取締役会の構成は、2019年6月より、執行役員を兼務する取締役を2名、監査等委員を兼務する取締役を5名(うち4名は独立社外取締役)として、独立性・客観性のある取締役会の監督をより強化するため、経営の"監督”と"執行”を分離したガバナンス体制・経営執行体制を導入しています。
これにより、業務執行に対する監査・監督機能の強化に加えて、株主の皆さまの視点に立った議論の活発化を図っています。
また、通常再任されることの多い会計監査人の在任期間を、より高い独立性と適正な外部監査の確保・継続を目的に、原則最長10年と定め、経営の透明性を強化する体制を整えています。

コーポレートガバナンス体制図

現在のコーポレートガバナンスの体制図です。経営の監督と執行を分離した体制を導入しています。

ガバナンス体制強化の変遷

ガバナンス体制強化の変遷

取締役会

当社の取締役会では、法律上定められた案件および会社として重要な意思決定が必要な案件に関する決議、経営戦略の立案などを行っています。業務執行決定の全部または一部を代表取締役に一任しておりますが、委任された事項についても、取締役会ではその実施状況をモニタリングしています。
取締役会は、原則毎月1回開催し、重要案件をタイムリーに審議決議しています。資料は事前配付、またはデータ配信の上、監査等委員会で、取締役会の各議題について事前に常勤の監査等委員から社外取締役である監査等委員に説明して闊達な議論が行われるよう工夫しています。取締役会では十分な審議時間を確保して、豊富な知識・経験を持つ社外取締役により多角的な視点で経営課題を検討しています。取締役会は、7名の取締役(独立社外取締役:4名、社内取締役:3名)で構成し、決議には取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数をもって決定します。ガバナンス体制の強化のため、取締役会全体としての多様性を図っており、知識・経験・能力および性別の多様性をより充実させていきたいと考えています。

2023年度の主な審議事項

審議テーマ

具体的な審議内容

内部統制とリスク管理

内部統制やリスク管理に関して報告・議論を行うリスク管理委員会、コンプライアンス委員会の活動状況を取締役会でも審議し、当社グループにおける内部統制活動の状況およびリスクマネジメントの運用状況をモニタリングしています。

ESG

当社の掲げているESG/CSR方針に基づき、ESG委員会の活動状況や同委員会で検討・実行した取り組みについて取締役会に報告し議論することで、取締役会による監視・監督を図っています。

経営戦略

当事業年度は、長期ビジョン【DESIGN 2030】の見直し及び新中期経営計画【BX 2025】を策定・発表し、初年度として、執行役員による各事業における現状及び課題の報告を実施し(年3回)、目標達成に向けて議論しました。

役員報酬制度改定

経済状況や当社の収益状況・株価水準の変化や固定報酬部分に関する課題があったことから、中期経営計画【BX 2025】の策定に合わせ、指名報酬委員会の審議も経て、制度改定を実施しました。

企業理念見直し

事業の変革と新たな成長戦略の検討が進む中で、創業時に制定した企業理念が現在の企業としての考え方や目指す方向性と異なるものとなってきたことから、企業理念の見直しを実施しました。

社長執行役員(CEO)の後継及び中長期サクセッションプラン

社長執行役員(CEO)の後継に関して、コーポレートガバナンス・コードを踏まえて後継候補や選任プロセスに関して議論しました。

M&Aの検討

成長戦略の実現へ向けたM&A戦略について、具体的な案件の検討を進めました。収益性のみならず、リスクの所在やそれに対する対策を数回にわたって議論し、決議しています。

取締役の専門性、活動状況

取締役及び監査等委員に期待する経験・知見については、スペースクリエーション企業への成長に向けて、経営の基本スキルに加え、当社の事業に即した専門性および成長に必要なスキルをベースとして、スキルマトリックスを策定しています。

取締役スキルマトリックス

氏名 取締役に期待する経験・知見 取締役会
出席状況
経営の基本となる経験・知見 当社事業に即した専門性および成長に必要な経験・知見
当社における
地位および担当
属性 在任年数 監查等委員 指名報酬委員 企業経営 財務会計 人事・法務 営業・マーケティング 素材事業 製造・品質 内装材事業 デザイン 物流 建設事業 グローバル・
海外事業
ESG・サステナビリティ
近藤 康正
  • 代表取締役
  • 社長執行役員
  • 指名報酬委員
執行 1年 100%
(10/10回)
髙木 史緒
  • 取締役
  • 執行役員
  • スペースプランニング部門ゼネラルマネージャー
  • 兼 品質企画室長
執行
浜田 道代
  • 社外取締役
  • 監査等委員
  • 指名報酬委員(委員長)
  • 社外
  • 独立
9年 100%
(13/13回)
宇田川 憲一
  • 社外取締役
  • 監查等委員
  • 指名報酬委員
  • 社外
  • 独立
5年 100%
(13/13回)
寺田 修
  • 社外取締役
  • 監查等委員
  • 指名報酬委員
  • 社外
  • 独立
3年 100%
(13/13回)
大鐘 亜樹
  • 社外取締役
  • 監查等委員
  • 指名報酬委員
  • 社外
  • 独立
美根 陽介
  • 取締役
  • 常勤監查等委員
非執行

取締役に求められるスキルに関する考え方

スキル名

必要性の理由

素材事業

販売する商品に使用する素材は、グローバルな経済活動の上に成り立っており、そのサプライチェーン全体に対する知見・経験を持つ取締役が必要である。

製造・品質

収益の多くを占める商品の安定供給と品質の安定性・安全性は事業の維持拡大の重要な要素であり、その製造・品質に関する知見・経験を持つ取締役が必要である。

内装材事業

当社の根幹は内装材の企画・販売・物流・施工であり、収益の大きなウエイトを占めている。当社事業の基盤であり、これに対する知見・経験を持つ取締役が必要である。

デザイン

デザインとは、当社の主力事業である壁紙・床材・ファブリックの意匠デザインだけでなく、今後の成長戦略である空間デザインも含まれており、これに対する知見・経験を持つ取締役が必要である。

物流

これまでの事業拡大の大きな強みであった物流は、今後も業界内ポジションの維持・強化の点でも重要機能の一つであり、これに対する知見・経験を持つ取締役が必要である。

建設事業

スペースクリエーション企業への成長を進めることは事業領域の拡大であり、そのためには建設業界全体に関する知見・経験を持つ取締役が必要である。

グローバル・海外事業

人口減少が進む中、国内市場に依存した成長は困難なため、海外への進出は企業の成長には欠かせない施策であり、海外事業に関する知見・経験を持つ取締役が必要である。

ESG・サステナビリティ

企業の持続的成長のためには地球環境や社会の持続性が必要であり、社会参画を含めた活動は企業の責務である。ESG・サステナビリティに関する知見・経験を持つ取締役が必要である。

取締役の選任理由

氏名

選任理由

2023年度の取締役会への出席状況

近藤 康正

大手商社において化学品関連業務等に携わり、前職では上場企業(製造業)の経営を担い、企業経営全般に関する豊富な知識と経験を有しています。当社入社後は、社長室、コーポレート部門の担当執行役員として、企画・管理業務を統括し、2024年4月1日に社長執行役員に就任、長期ビジョン【DESIGN 2030】、中期経営計画【BX 2025】の達成に向けて取り組んでいます。これらの経験と実績から、引き続き取締役として適任と判断いたしました。

100%(10回中10回)出席

髙木 史緒

当社において営業・デザイン・プロモーション・DX・経営企画など幅広い業務を経験し、経営戦略の策定・立案等に携わる社長室長を経て、2023年7月より商品開発・調達・デザイン戦略を所管するスペースプランニング部門のゼネラルマネージャーに就任しております。コーポレートブランディングや、企業理念、長期ビジョン、中期経営計画の策定等にも携わり、当社の経営に関して高い知見があります。国内インテリア事業とデザイン業界、及び社内状況に関して豊富な知識と経験を有しており、取締役として適任と判断いたしました。

浜田 道代

会社法学者及び元公正取引委員会委員としての豊富な経験と高度かつ専門的な見識を有され、取締役会などにおいて、積極的に企業法務に係る意見や当社の女性活躍推進に係る意見をいただくなど、経営を監督・監査する役割を担っていただいております。引き続き、同氏の見識を当社の経営に活かしていただけるものと判断し、監査等委員である社外取締役として選任しております。

100%(13回中13回)出席

宇田川 憲一

上場会社において生産・製造面の事業構築に加え、さまざまな海外事業の立ち上げ・拡大に貢献され、また代表取締役経験者として経営に携わるなど豊富な経験と高度かつ専門的な見識を有され、取締役会などにおいて積極的に企業経営全般に係る意見や当社の海外事業運営に関する意見をいただくなど、経営を監督・監査する役割を担っていただいております。引き続き、同氏の見識を当社の経営に活かしていただけるものと判断し、監査等委員である社外取締役として選任しております。

100%(13回中13回)出席

寺田 修

上場会社(大手建設会社)における国内外での建設事業の拡大に貢献され、また代表取締役経験者として経営に携わるなど豊富な経験と高度かつ専門的な見識を有されており、取締役会などにおいて、同氏の企業経営全般並びに建設業界全般に係る意見をいただくなど、経営を監督・監査する役割を担っていただいております。引き続き、同氏の見識を当社の経営に活かしていただけるものと判断し、監査等委員である社外取締役として選任しております。※1

100%(13回中13回)出席

大鐘 亜樹

男女雇用機会均等法施行後の女性総合職第一期生として大手銀行に入行し、資本市場、融資、拠点マネジメント、監査等多岐に亘る業務経験を有し、同行からの出向先(金融機関)においては取締役として経営に携わってきました。同氏の財務会計、企業経営等に関する知識と経験は、取締役会等において、当社の経営に活かしていただけるものと判断し、監査等委員である社外取締役として選任をお願いするものであります。※2

美根 陽介

当社において中国四国支社長、ロジスティクス本部長など幅広い分野に従事し、国内インテリア事業と物流業界、及び社内状況に深く精通し、また子会社の取締役も務める等、豊富な業務知識と経験を有しております。監査等委員会における社内の日常的な情報収集や執行部門からの定期的な業務報告の聴取等、当社の経営の監督・監査機能をより高いレベルに高める事が可能であると判断し、監査等委員である取締役候補者としております。なお同氏は、常勤の監査等委員としての任にあたる予定です。

〈独立性に関する補足説明〉

※1寺田修氏は、2020年6月まで、当社の取引先である清水建設株式会社の取締役を務めておりましたが、同社との取引額は当社の2022年度連結売上高に対する割合で0.001%に満たない額であり、当社が定める社外取締役の独立性基準を満たしていることから、独立性に関して懸念はないと判断しております。

※2大鐘亜樹氏は2019年3月まで株式会社三井住友銀行に勤務しておりましたが、同行を退職後5年が経過しております。また、2024年3月末時点における当社グループの同行からの借入金は、当社連結総資産に対する割合で1.17%であり、当社が定める社外取締役の独立性基準を満たしていることから独立性に関して懸念はないと判断しております。

取締役会の実効性評価

取締役会としての判断、監督、会議の運営などについて、取締役会の実効性の担保に努めるべく、年1回、各取締役が取締役会に対する自己評価を行い、そのうえで取締役会全体の実効性の分析・評価を実施しています。評価項目は、取締役会の構成から議論内容の質やステークホルダーとの対話まで多岐にわたります。
2023年度分の評価については、2024年5月にアンケート調査を取締役全員に実施し、評価結果を取締役会で審議しており、今後の取締役会において、実効性をより高められるよう努めています。

2023年度取締役会の実効性評価の方法

2023年度取締役会の実効性評価の方法

主な評価項目およびその結果

  • 中長期経営計画に関する進捗状況の確認を行い、株主への詳細な内容説明は行えているが、より適切な議論と確認の場を創出していく。
  • 取締役会では適切なテーマについて審議・議論が行われているが、さらに分野を拡大して、事業の進捗状況や成長戦略に関する議論を促進する。
  • 取締役会における執行からの説明は十分になされ審議が行われているが、より社外取締役が事業の内容や状況を確認する場を増やす。
  • グループ全体を含めた内部統制やリスク管理体制は適切に機能しており、運用状態の把握ができている。

社外取締役の独立性基準

当社における社外取締役の選任については、会社法および上場証券取引所の定める「社外性」「独立性」に関する要件に加え、当社の経営に対し率直かつ建設的に助言できる高い専門性と豊富な経験を重視しています。その独立性基準については次のとおり定めています。

1. 現在において、次のいずれにも該当しない者

  1. 当社の議決権の5%以上所有する株主またはその業務執行者
  2. 当社との取引金額が当社連結売上高の2%以上の取引先及びその子会社の業務執行者
  3. 当社の主要借入先(当社グループの借入額が直近事業年度末で当社連結総資産の2%以上の借入先)の業務執行者
  4. 当社の会計監査人に所属する公認会計士
  5. 当社からの取締役報酬以外に年間1,000万円以上の金銭その他財産上の利益を当社から得ているコンサルタント、会計専門家、法律専門家(当該財産を得ている者が法人・団体等である場合には、当該法人・団体に所属する者)
  6. 当社から年間100万円以上の寄付を受けている組織の業務執行者
  7. 上記(1)から(6)の2親等以内の親族

2. 直近過去3年間のいずれかの時点において、上記(1)から(7)のいずれにも該当しない者

取締役のトレーニング等

21年12月に移転した関西支社の視察

コンプライアンス経営推進のため、取締役及び経営幹部の社内外での研修参加機会を設けており、第三者機関主催の研修会等へ参加する際の費用は会社負担としています。独立社外取締役については、業務執行状況に関する認識向上のため、就任時のオリエンテーションに加えて、現場の視察や経営陣等との対話の機会などを設けています。

監査等委員会

監査等委員会は、独立社外取締役4名に常勤の社内取締役1名を加えた5名の監査等委員で構成しています。
内部統制システムを活用した監査を中心としつつ、委員自ら国内外の拠点往査も実施しています。一方で、社長との定期的な意見交換会、執行役員や社員からの報告会、会計監査人からの報告会、関係会社監査役連絡会等の実施により、有益な情報を入手・共有することで監査等委員会としての監査の実効性を高めています。

監査等委員会の活動状況

・経営執行責任者との対話 33回 ※2023年度実績

 取締役会以外に、執行役員、各グループ会社の経営責任者、本部長・部長との対話の機会を設けています。

・重要会議への出席 46回 ※2023年度実績

 取締役会以外に、事業戦略会議など執行の意識決定に寄与する重要会議へ参加し、必要な意見を述べています。

・往査の実施 53回 ※2023年度実績

 各現場の生の情報を得るため、現地往査を実施しています。

指名報酬委員会

指名報酬委員会は、監査等委員である独立社外取締役全員と取締役 社長執行役員で構成しています。当委員会では、後継者候補の育成計画の監督や役員の報酬に関して具体的な報酬額を決定し、透明性をもって取締役会への提案・説明を行っています。最高経営責任者や取締役、執行役員の選解任には十分な時間と資源をかけ、客観性・透明性・適時性をもって資質を備えた人物を選任し取締役会に提案します。また、最高経営責任者がその機能を十分発揮していないと認められる場合には、適時性をもって解任を取締役会に提案します。次期の取締役会構成メンバー、執行役員を兼務する取締役の業績評価や、取締役を兼務しない執行役員の人事・評価、ならびに、役員報酬制度のあり方、報酬水準の妥当性などについても審議を行っています。

指名報酬委員会の活動状況

氏名 常勤/社外 出席状況
(全16回)
具体的な審議内容
浜田 道代 社外 16回
  • 次年度の社長執行役員候補および経営執行体制に関する検討
  • 次年度の取締役会構成に関する検討
  • 社長執行役員の中長期サクセッションプランの検討
  • 中長期的な執行役員および幹部社員候補の検討
  • 取締役(監査等委員である取締役を除く)のうち執行役員を兼務する者および執行役員の貢献度評価
  • 役員報酬制度の見直し
羽鳥 正稔 社外 16回
宇田川 憲一 社外 16回
寺田 修 社外 16回
安田 正介 常勤 13回

※羽鳥 正稔氏は、2024年6月19日開催の第72回定時株主総会をもって辞任しております。
安田 正介氏は、2024年6月19日開催の第72回定時株主総会おもって退任しております。

サクセッションプラン

当社では、経営理念や具体的な経営戦略を踏まえ、CEO等の後継者育成計画とその運用状況について監督するとともに、人格・人望、見識、業務遂行能力、経営的視点、および経営参画意識等の基準に照らし、議論を進めています。指名報酬委員会は幹部社員および執行役員の指名に関し、最高経営責任者(CEO)などの後継者プラン(後継計画、要求される資質、候補者選定などのステップを含む)やCEO後継者の選任に至った経緯・背景、CEO解任の提案およびそれに至る経緯・背景等について審議し、必要に応じ取締役会に説明提案を行うこととしています。

後継者の育成について

育成に関しては、将来有望な人材プールとしてリーダー養成研修や上級管理職(執行役員候補)研修といった社内の選抜制度等を活用するほか、執行役員や幹部社員候補の検討においても、社外取締役が取締役会に留まらず他の重要会議(事業戦略会議、事業課題検討会議等)に参加したり、部長、事業部長、支社長等の社員を対象に将来の経営に関して個別面談を実施したりすること等を通じて、後継候補者の人となりや考え方を直接把握する機会を多く得られる仕組みとしており、指名報酬委員会における議論に役立てています。

後継者育成に関する重要事項

  • CEOの中長期サクセッションプランの検討
  • CEOに求められる要件・資質の適宜見直し
  • 中長期的な執行役員や幹部社員候補の検討
  • 一定の時間軸の中で、後継者の育成状況を確認する機会の多様化

指名報酬委員会委員長メッセージ

さらなる成長に向けてバトンを繋ぐ

社外取締役 指名報酬委員会委員長
浜田 道代

サンゲツは、2015年に役員人事や役員報酬に関する透明性・客観性の確保を目的に指名報酬諮問委員会を設置しました。委員会の役割は、取締役と執行役員の指名と報酬について審議し、取締役会に提案することです。取締役会が監督機能を果たすうえで、重要な役割を担っていると言えるでしょう。なかでも核心となる任務は、社長の後継者選びと、社長交代時期の判断です。サンゲツでは、指名報酬委員会の委員長は互選で社外取締役から選ぶことと、委員長が議長となることを、規則で定めています。この規則は、委員会がこの核心的任務を果たす際に、とりわけ理に適っています。
指名報酬委員会は、この課題に2年前から本格的に取り組んできました。そしてこの1年、集中的に審議し、社長交代を決めました。委員会の原案が取締役会で通り、2024年4月1日に近藤 康正が新社長に就任し、安田 正介は社長を退任しました。
安田は、2014年に日比 祐市から経営のバトンを渡されて以来、類い希なる能力と意欲をもってサンゲツの経営に取り組み、高い目標を掲げつつ、第3の創業とも言うべき変革を成し遂げました。それだけに、安田の後継者選びは大変でした。私は2021年に指名報酬委員会委員長となって以来、委員会の核心的任務の重さをひしひしと感じてきただけに、2年がかりのプロジェクトが達成され、感無量でした。
2024年4月の社長交代の後、近藤新体制でサンゲツはスムーズに走り出しました。安田は10年間、一人ひとりの社員が経営を担う力をつけること、そして高い目標に向けてチャレンジし続けることを励ましてきました。安田体制下で成長を遂げた大勢の社員が、近藤新社長の周りを固め、新体制を支えています。指名報酬委員会としては、社長・執行役員をはじめとして社員全員が力を合わせて事業をさらに発展させていけるように、当面は後方から見守りつつ必要な助言をするのが、目下の役割となるでしょう。
昨今、日本の上場会社は取締役会の監督機能の強化に動き出しています。指名報酬委員会の設置も当たり前となりましたので、我々も他社の好事例に学びたいと思います。一方、サンゲツが今後とも企業価値を高め続けるならば、取締役会の監督機能を強化し続けてきた我々の歩みは、他社にとっても参考となる好事例とみなされるでしょう。
サンゲツでは、執行側と監督側が、これからも緊張関係と信頼関係を保ちつつ、企業価値の向上に力を尽くす所存です。

業績・株主価値と連動した透明性の高い報酬制度

グラフ1 各執行役員役位別乗数(報酬別)

各執行役員役位別乗数(報酬別)グラフです。役位が上位になるに従い、基本報酬と業績連動報酬と譲渡制限付き株式報酬の比率が高くなっています。

当社の報酬制度は①基本報酬、②業績連動報酬、③譲渡制限付株式報酬で構成し、取締役のうち執行役員を兼務しない者および監査等委員である取締役の報酬は基本報酬のみとします。取締役のうち、執行役員を兼務する者および執行役員の基本報酬は、当該事業年度の事業に対する各人の貢献を指名報酬委員会が評価し、貢献評価指数を0.85 〜1.25 の間で決定し、算出します。業績連動報酬は、事業収益と資本効率向上の指標である連結当期純利益(ROE)を連動指標とし、資本効率の向上を単年度ベースで実現することを目的に支給しています。譲渡制限付株式報酬は、株主の皆さまと価値共有を進めること、および企業価値の持続的な向上を図るインセンティブを明確にすることを目的に、現在の中期経営計画期間に適用される株式数を決定、これを支給しています。各報酬の算定式は以下のとおりです。なお、役位が上位になるに従い、業績連動報酬と譲渡制限付株式報酬の比率が高くなるように設計するものとしています。

表1 各報酬制度の内容

報酬の種類 内容 算定式
基本報酬 指名報酬委員会で各人の
当該年度の実績および
事業への貢献により評価、決定
(算定式)
基本報酬 = 標準基本報酬 × 貢献評価倍率 × 各役位別乗率
  • ・標準基本報酬 = 15,600 (千円) /年
  • ・貢献評価倍率 = 当該年度の貢献度評価に応じて0.85~1.25で決定
  • ・各執行役員 役位別乗率 (基本報酬) (グラフ1参照)
業績連動報酬 連結当期純利益を連動指標とし、決定 (算定式)
業績連動報酬 = 執行役員1人当たりの標準金額 × 各役位別乗率
  • ・執行役員1人当たりの標準金額 (表2参照)
  • ・各執行役員 役位別乗率 (業績連動報酬) (グラフ1参照)
譲渡制限付
株式報酬
中期経営計画期間に
適用される株式数を決定
(算定式)
譲渡制限付株式報酬 (株数) = 執行役員標準株数 × 各役位別乗率
  • ・執行役員標準株数 = 2,000株
  • ・各執行役員 役位別乗率 (譲渡制限付株式報酬) (グラフ1参照)

表2 執行役員1人当たりのベース単価

連結当期純利益(ROE) ベース単価 (X = 連結当期純利益)
50億円以下
(ROE5.0%以下)
0円
50億円超~100億円以下
(ROE5.0%超~10.0%以下)
(X - 50億円) × 0.17%
100億円超~140億円以下
(ROE10.0%超~14.0%以下)
(100億円 - 50億円) × 0.17% + (X - 100億円) × 0.14%
140億円超~180億円以下
(ROE14.0%超~18.0%以下)
(100億円 - 50億円) × 0.17% + (140億円 - 100億円) × 0.14% + (X - 140億円) × 0.10%

※自己資本=1,000億円をベースに各ROEにて基準となる各連結当期純利益を計算

役位別 報酬総額と構成割合

  • 連結当期純利益50億円、ROE5.0%の場合、社長執行役員の報酬総額は60.8百万円、業績連動報酬の比率は0%です。
  • 連結当期純利益100億円、ROE10.0%の場合、社長執行役員の報酬総額は86.3百万円、業績連動報酬の比率は29%です。
  • 連結当期純利益140億円、ROE14.0%の場合、社長執行役員の報酬総額は103.1百万円、業績連動報酬の比率は41%です。

政策保有株式に関する考え方

当社は事業戦略上、新たに関係を強化すべき企業、また取引先として継続して関係を強化すべき企業などの観点から総合的に判断し、中長期的に保有する政策保有株式を決めています。株式を継続保有するかどうかについては、投資先により担当部署を設け、関係性の変化なども考慮して事業戦略上の保有継続の必要性を確認します。財務経理部では保有にかかるコストとリターンの確認を行い、それらの情報をもとにして中長期的に保有の意義があるかどうかを執行が判断、保有意義が消失した場合には株式の売却を行う方針とし、取締役会で報告しています。売却が決定した場合、投資先と対話を行ったうえで売却を進めることとしています。
2024年3月期においては保有株式の株価上昇影響もあり、純資産に占める割合は高まっていますが、保有銘柄数は着実に減少基調にあり、資産効率性を意識した経営を進めています。

政策保有株式推移

政策保有株式推移

議決権行使の基準

投資先企業の経営方針を尊重したうえで、さまざまなチャネルを通じた対話やコミュニケーションを行い、その企業の中長期的な企業価値の向上、株主還元姿勢、コーポレート・ガバナンスやCSRへの取り組みなどを総合的に判断するとともに、議案の内容が当社の保有目的に適合するか、また当該企業の価値向上につながるかを個別に精査したうえで、賛否の判断をしています。

IR・SR強化

当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、株主・投資家との建設的な対話を通じた信頼関係の構築を目指しています。開示においては、ディスクロージャーポリシーに則り、法定開示のみならず、当社への期待・関心事を踏まえた適時・適切な情報開示により、経営の透明性を高めています。また、社長室広報IR課をIR活動の専門部局とし、財務経理部、社長室経営企画課、ESG推進課などの各部門が連携して、より実効性の高い情報提供に努めているほか、要望に応じて代表取締役社長、担当役員等が面談に対応することで、当社の企業価値を適正に評価していただけるよう取り組んでいます。
2023年度においては、機関投資家向けに代表取締役社長が登壇する決算・経営戦略説明会を2回実施し、動画の公開や日本語・英語での説明会資料、スクリプト等を開示しました。さらに、当社の中長期的な企業価値向上をテーマとした、アナリスト・機関投資家と監査等委員との対話イベントについても、対話の内容をWEBサイトに公開しています。これらの活動により、国内外のアナリスト・機関投資家との個別面談回数は増加基調となっています。また、個人投資家向けIRイベントへの参加や、株式情報誌への出稿など幅広い情報開示だけでなく、2017年より個人株主向け会社説明会を実施し、各取締役出席のもと、代表取締役社長が説明を行っています。
これらの活動・対話で得られた意見は、広報IR課を通じて、取締役会をはじめ、四半期ごとに事業部門責任者などに共有営改善につなげています。2023年5月に発表した中期経営計されており、情報開示の拡充および企業価値向上に向けた経画【BX 2025】では、対話を通じて得られた株主からの意見を株主還元方針に反映するなど、実際の事業運営にもいかしながら経営改革を進めています。

アナリスト・機関投資家(国内外)との個別面談回数

アナリスト・機関投資家(国内外)との個別面談回数

IR・SRにおける対話状況(2023年度実績)

  • 個人株主・投資家との対話
    個人投資家向け説明会 1回
    (代表取締役社長が登壇)
    株主向け会社説明会 1回
    (代表取締役社長、社外取締役、執行役員等が出席)
  • 機関投資家との対話
    決算・経営戦略説明会 2回
    (代表取締役社長、担当役員等が登壇)
    アナリスト・機関投資家(国内外)との個別面談 約130回
    アナリスト・機関投資家と監査等委員の座談会 1回

アナリスト・機関投資家と監査等委員の座談会