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Project Report
有限会社 橋本夕紀夫デザインスタジオ

東京白金台に所在する八芳園は、レストラン・結婚式場を敷地内に持つ広大な日本庭園です。歴史ある庭園の中に大小20を超える多様な宴会場を備えています。段階的に改修を施しながら、洗練された高級感のあるおもてなし空間を提供し続ける同施設は、2016年9月に宴会場「チャット」、「グレース」とロビーをリニューアルし、新たな空間に生まれ変わりました。
内装のデザインやコンセプトを手がけられた橋本夕紀夫デザインスタジオ様にお話を伺いました。

撮影:ナカサアンドパートナーズ
有限会社 橋本夕紀夫
デザインスタジオ
橋本 夕紀夫様
有限会社 橋本夕紀夫
デザインスタジオ
舘田 磨理子様

ゲストと空間を結ぶ故郷をデザイン

八芳園には“おもてなしリゾート”をコンセプトに、和と洗練された様々な要素を融合した多彩なデザインの空間があります。それぞれのフロア、宴会スペースが個別にテーマを持っており、今回リニューアルをした3Fロビーと2つの宴会場は、“旅するキュイジーヌ”の発想から、最終的に「里山」というテーマが設定されました。八芳園では、例えば30年前に婚礼を挙げた夫婦が、30年後に同じ食事を楽しめるイベントを設けるなど、10年後、20年後も訪れていただけるようなゲストとの深い付き合いを大切にしていらっしゃいます。そうした想いからそれぞれの“故郷(ふるさと)”を感じるように、フロア内にいろいろな里を展開しようと決めました。
デザイン全体で大切にしたのは、日本の伝統的な素材を取り入れつつ新しい使い方をすることです。誰もが知っている素材を用いてどこか懐かしさが感じられ、今までになかった使い方で飾ることによりデザインにも新鮮みが感じられ、訪れる人の刺激になると思います。

左/3F ロビー 右上/宴会場「チャット」 右下/宴会場「グレース」

懐かしさの中に洗練さが漂う3つの里

宴会場やロビーは見栄え重視、豪華に、派手になる傾向にありますが、今回は旅、里という大きなストーリーがデザインの根底になっています。
ロビーは“夢の野山”というテーマで、故郷の野山をイメージして多様な花で囲まれた空間にし、床はブルーを基調としたカーペットで広がる花畑を、そこから天井、壁は、インクジェット壁紙で、花が咲き乱れる様子を立体的に表現することにしました。カーペットのデザインは、中央に花が密集し、端にいくに従ってぱらぱらと少なくなり、ベース色のグレーに溶け込んでいくようなグラデーション効果を持たせるなど、“絵”としての表現にこだわりました。

宴会場「チャット」は“和紙の里”、日本の伝統工芸である和紙をテーマにした空間で、壁面は手漉き和紙、カーペットは和紙の“もみ柄”をデザインしました。実際に紙を手で揉んで風合いを出したものをスキャンし、デザインに落としこんでいきましたが、カーペットのパイルでもみ感の繊細さ、柄の大きさ、揉まれた紙の立体感や陰影を表現するのは難しく、何度も試作を重ねました。天井は光天井にし、和紙の柄をプリントしたテント生地で覆っています。

もう一つの宴会場「グレース」は“竹の里”をテーマに、特徴ある竹の装飾を用い、壁面には竹の質感と相性の良い金箔の壁紙を選びました。間接光を用いて全体的に統一感の取れた色合いになるようデザインしています。カーペットは一面に笹の葉を散らしたモチーフを配置し、空間全体が竹に覆われている、という印象を与えます。笹の葉の輪郭をぼかし、ベース色と自然になじむよう配慮しました。

左/宴会場「チャット」 右/宴会場「グレース」

空間のイメージを決めるカーペットデザイン

カーペットのデザインは、用途やコンセプトにもよりますが、面積が大きく、空間に対する影響が非常に強いので慎重に考えます。しかしながら、その空間のイメージを決定づける力があり、特徴的な個性を持たせることができるので、結果的にインパクトの強いデザインを考えることが多いです。
それと同時に、派手さだけではなく品格を持ったものにしたいので、全体のバランスをとるのが難しく、何度も試行錯誤を重ね、納得のいく仕上がりを追求しています。

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